脱毛でやけどになった時の対処・治療法と予防法など全知識

近年、光エネルギーを活用した脱毛手法が主流になってきていることもあり、脱毛にまつわる肌トラブルの中で、やけどによる被害が増えています。また、医療機関や脱毛サロンでの脱毛によるやけどだけでなく、家庭用脱毛器での脱毛トラブルも増加しています。

ここでは、脱毛に関する火傷について

・どうして脱毛で火傷を負ってしまうの?
・脱毛での火傷は治るの?
・未然に防ぐには、どうすればよいの?

と言った疑問にお答えします。

やけどとは

一般的なやけどの特徴

やけどは、医療の専門用語では、熱による肌や粘膜の損傷という意味で「熱傷(やけど)」という漢字で表されます。

軽度なものも含めると意外に、身近な症状かもしれません。やけどは深さとその面積で症状の重症度、治療方法が決まります。

軽度なものであれば赤みや腫れが出る程度で、数日で治りますが、重症化すると水ぶくれができ、腫れが生じて治るまでに数週間かかる場合もあります。また、やけどの厄介な点は、治った後の傷跡を取るのが難しいという点にあります。

いずれにしてもやけどは、適切な応急処置をしたかどうかでその後の状態が大きく変わってきます。傷跡を残さないためにも、見た目や痛みで自己判断しないでください。少しでも異常を感じたら、速やかに医師に相談しましょう。

脱毛によるやけどの特徴

脱毛によるやけどについて詳しく見ていきます。

現在、主流になりつつある脱毛法として、光のエネルギーを利用したレーザー脱毛やフラッシュランプなどの光線を使ったものがあります。

それぞれ光の種類は異なりますが、両方とも光エネルギーによって、毛根にダメージを与えて脱毛するという点は共通しています。「毛根にダメージ」を与えるとは、光エネルギーによって、毛根の黒い部分を熱して、新しく毛が生えにくくすることを指します。

通常はやけどするほどの強いエネルギー照射は考えられませんが、何らかの原因で毛根部やそれ以外の肌の黒っぽい部分が熱を持ちすぎると、脱毛によるやけどが生じます。

例えば、日焼け後の肌への照射などです。日焼けした肌には、肌を黒くする原因であるメラニン細胞が多数存在します。このメラニン細胞がたくさんある肌に光を照射すると、メラニン細胞が熱を持ち、結果的に、赤みや腫れが生じたり、皮膚がヒリヒリするなどのやけどの症状が出ます。

また、もともと色素沈着の濃い部分や、極度の乾燥肌に強いエネルギー照射をする場合も注意が必要です。

水分と油分のバランスが取れた健康な肌状態であれば、肌本来の抵抗力が備わっているので、外部の刺激から肌を保護する機能が働きます。しかし、極度な乾燥状態で肌が敏感になっていると、熱を皮膚内で上手く発散させることができず、やけどのリスクは高くなります。

脱毛で「やけどしたかも」と思った時の判別法

医療機関やサロン、自宅で脱毛をした後に、痛みを感じても、それがやけどなのかどうかはなかなか判断しにくいものです。

そこで、やけどの場合によく見られる症状を表にまとめました。

やけどかどうかを判別するための症状別の目安
肌の状態 やけどかどうかの目安
日焼け後のようなうっすらとピンクがかった赤みがある ・ヒリヒリ感があり、2~3日経過しても痛みが治まらない場合は軽度のやけどの可能性が高い
みみず腫れ(じんましん)ができている ・脱毛処理後に腫れ始め、かゆみも伴う場合、軽度のやけどの可能性がある
・光へのアレルギーを持つ人は、光照射によるアレルギー反応で腫れた可能性もある
水ぶくれができている ・脱毛処理後に水ぶくれができ、さらに痛みを伴う場合、中度のやけどである可能性が高い

これらの症状が見られた場合、やけどの可能性が高いです。速やかに医師に相談してください。

また、自分で判断できない場合も、放置せず医療機関を受診しましょう。医療機関やサロンに通われている方は、ひとまず担当のスタッフに相談してみましょう。

光を照射した瞬間に「熱い」と実際に感じたり、異変が起こったりするのではなく、余熱のようにじわじわと肌に熱が浸透していくことでやけどに進展していくこともあります。

処理後すぐだけでなく、時間が経過していても、やけどを発症する可能性があるので注意してください。

脱毛によるやけどの正しい対処法と間違った対処法

やけどを負ってしまった場合の正しい対処法と間違った対処法について解説します。

やけどを負ってしまった時の正しい対処法

やけどが疑われる場合、まず適切な冷却方法で応急処置をしてください。その後、速やかに医療機関を受診し、医師の判断を仰ぎましょう。

適切な方法で冷却すること

やけどの冷却処置として適切な方法は、流水(水道水でOK)で冷やすことです。冷却することでやけどの進行や痛みを抑えます。

冷却時の注意点

・水道水で冷やす際には、患部に勢いよく直接かけるのではなく、周りに水を当てるようにする
・流水で冷やすのが難しい場合、洗面器などに水を張って冷やす
・時間の目安は、15~30分ほど、ほてりが落ち着くまで冷やす
・氷や保冷剤を直接当てない(凍傷を避けるため)

冷却後は、しばらく様子を見ることが大切です。ただし不安がある場合や、時間が経過しても痛みが引かない場合は、できるだけ早めに医療機関を受診してください。

やってはいけない間違った対処法

何もせず放置する

脱毛によるやけどの特徴として、直後にわかりにくい点があげられます。光を照射した直後の肌であれば、通常多少の熱を持ちます。そのため、直後はしっかり冷却ジェルや冷たい水で絞った濡れタオル等で冷やす必要があります。

ですが、なかなか熱や赤みが引かなかったり、時間が経過するごとにじんわりと赤みや痛みが出てくることもあります。

照射後の肌状態を注意深く観察し、少しでも異変を感じたら、この程度なら少し様子を見ようなどと安易な判断で放置せず、速やかに皮膚科など専門の医療機関を受診してください。

やけどの症状は、表面の色や痛みに関わらず深くまで損傷が進んでいることもあります。

自分で判断する

「痛みもなく、肌表面も少し赤みがある程度だから大丈夫」などの勝手な自己判断は、治療を遅らせることになります。症状を進行させ悪化したあげく、治るまで長い期間を要したり、跡が残ってしまったりしてから後悔することになりかねません。

また市販の外用薬がありますが、自己判断で薬を使用することもおすすめできません。

水ぶくれをつぶす

水ぶくれは絶対につぶしてはいけません。 水ぶくれができてしまった場合、表皮のさらに底にある真皮まで損傷が進んでいるという目安になります。

水ぶくれ内にはリンパ液などが含まれていて、患部を保護する役割があります。そのため、つぶさずに置いておく方が、回復が早くなります。 逆に、水ぶくれが破れてしまうと、ばい菌に感染しやすくなるため、治りが遅くなります。

やけどの治療法|きれいな肌の取り戻し方

治療法と完治までの期間の目安

繰り返しになりますがやけどの可能性がある場合、まずは冷やすことが大切です。この応急処置はその後の治療ややけどの跡に大きく影響してきます。

肌には新陳代謝の機能があるため、やけどは基本的には自己治癒力で治せます。しかしやけどの深さや広さで、治るまでの時間や治癒後の傷跡の様子も違ってきます。できるだけ早い段階でやけどの深さがどの程度かを診断をし、適切な治療を受けることが大切です。

やけどには特化した薬があるわけでなく、深さや肌表面の状態で治療法が決まります。表皮のみの損傷であれば跡も残りにくく、炎症を抑え悪化させなければそのまま自然治癒します。

水ぶくれができてしまった場合、水ぶくれが破れてしまうと傷になります。傷が浅いものであれば、医師の治療を受けると通常1~2週間で治ります。

それよりも深くまで傷が達した深達性のものになると適切な治療を受けても、治るまでに1カ月以上もかかり傷跡が残る可能性が高くなります。

やけどの深さによる治療法の違い
深さの分類 治療法
軽度のやけど 表皮のみの損傷なので、炎症を抑える軟膏を使用して自然治癒を目指す
中度のやけど 浅い部分のみ 表皮、真皮まで損傷が達していて水ぶくれができている状態なので、感染予防が必要な際は軟膏を使用。
※患部の湿潤を保ち、決して乾燥させないことがポイント
深い部分にも到達

やけどの傷跡をケアする

症状の程度にもよりますが、やけどで怖いのは傷跡が残ってしまうことです。治るのに時間がかかるやけどは、跡も残りやすいと言われています。治療後はできる限り跡が残らないように適切なケアで対策しましょう。では、どのようなケアを行えばよいでしょうか?

やけどの傷跡には色素沈着してしまうケースと、傷跡が完治した後、皮膚が盛り上がる症状やただれてしまう症状(ケロイド)があります。

色素沈着を防ぐための治療法

・紫外線を避ける
やけどの傷跡に紫外線を当てると色素沈着を起こしやすく、傷跡が色濃くなってしまいます。遮光性のテープやUV機能の衣服を身につけるなどの対策をしましょう。足のすねや腕の場合、特に紫外線を浴びやすいので要注意です。

・ビタミンCの活用
ビタミンCには、メラニンの生成を抑制する効果があります。食事やサプリメントで積極的に摂取し、さらにビタミンC誘導体等の美白有効成分を配合した化粧品でケアすると効果的です。

詳しくは、色素沈着の治療法|きれいな肌の取り戻し方 を参照してください。

皮膚の肥厚やただれを防ぐための治療法

皮膚が厚くなる症状(皮膚の肥厚)は、傷跡の範囲を超えて拡がりません。その特定の部位だけが盛り上がり硬くなります。

しかし、ただれ(ケロイド)は傷の範囲を超えて正常な皮膚にまで拡がるという特徴があります。

脱毛によるやけどでこれらの症状が出ることは考えにくいですが、水ぶくれができてしまったり、浅いやけどでも感染を起こしたり、傷口に再生した皮膚が繰り返して何度も剥がれてしまうなどの状況で、皮膚が厚くなる症状が起こる可能性があります。

いずれにしてもこのタイプの傷跡の治療は専門の医療機関に行く必要があります。

専門医と相談して、薬物療法や圧迫療法、レーザー治療など、さまざまな方法から最適な治療法を選択することになります。

脱毛によるやけどの予防法|日頃から気を付けるべきこと

最後に、医療機関や脱毛サロンで処理を受けるケースと家庭用の脱毛器でセルフケアをするケースに分けて、やけどの予防法について解説します。

共通の予防対策

医療機関、脱毛サロン(エステ)、セルフケア、いずれを選択するにしても共通して気をつけたいのは、日焼け後の肌には絶対に照射しないことテスト照射を必ず行うことです。

日焼け後の肌には照射しない

脱毛時に照射する光は、メラニン色素(黒い色素)に反応して熱に変換されます。日焼けによって活性化された肌上のメラニン色素に反応するのを避けるため、日焼け後の肌には絶対に照射しないでください。

テスト照射をする

すぐに効果を出したい、早く済ませたい、ついそう考えがちですが、まずはごく狭い範囲(目立たない箇所)でテスト照射を行いましょう。その後、1週間程度経過を見て、本格的な処理をスタートしてください。万一、体質に合わなかった場合も、被害を最小限に抑えることができます。

医療機関(美容外科・美容皮膚科等)での注意点

美容クリニック等の医療機関を利用する場合、レーザー脱毛器が使用されます。さまざまな機種がありますが、いずれもハイパワーの光エネルギーで、効果的な処理ができる点が人気です。レーザー治療を選択する際に重要なのは、十分な知識や技術があり、効果やリスクに対しても熟知したクリニックを選ぶことです。

また、治療環境が整っているかや治療後のアフターケアや事前の説明が丁寧に行われているかをしっかり見極めることも重要です。「クリニック=安心安全」と思い込まず、症例数も多く、専門分野で深い知識のあるクリニックを選ぶようにしてください。

脱毛サロンでの注意点

脱毛サロンやエステでは、業界の自主基準に沿って、光のタイプやパワーなど、肌への安全性を最大限に考慮して開発された機器を使用します。

効果を実感するまで少し時間がかかりますが、安全性は高いです。

サロン選ぶ際には、業界の安全規定の遵守に対する姿勢や店舗内の衛生管理について確認してください。そしてトラブル発生時に、速やかに医師の診察が受けられるような体制があるかも重要です。

専門医のサポート体制があれば、トラブル発生時にも脱毛に関して熟知した医師の診察のもと、早い段階で適切な治療が受けられます。

家庭用脱毛器での注意点

最近は家庭用の脱毛器でも光脱毛のタイプが増えています。

家庭用光脱毛器の場合、安全性に留意した設計であること、そしてパワーもそれほど強くないことが大前提です。

ですが、トラブルはゼロではありません。説明書をよく読み、指示に従うことが安心安全に使用するための必須条件です。

日焼け後に使用しないのはもちろん、色素の濃い部分への照射、シミやほくろ部分への照射は事故の元です。さらに毛質の太さや極度な乾燥肌への使用にも注意が必要です。

処理時に塗布するジェルなどは必ず指定されたものを使用し、アフターケアもしっかり行いましょう。

また、輸入製品など出どころがはっきりしない機器や、非常時に問い合わせが難しいような機器の使用は控えましょう。

まとめ|やけど予防と対処

脱毛によるやけどの原因

脱毛によるやけどは、使用方法を誤った場合に生じます。光を照射することによって黒の色素に反応し熱に変換される原理を利用しているため、使い方を誤るとやけどのトラブルにつながることを理解しておくことが大切です。

主な原因としては、次の4つが挙げられます。

  • 日焼け後の肌への照射
  • 色素の濃い部位への不適切な強さでの照射
  • 極度な乾燥肌への照射
  • ほくろ、シミ部位への照射

脱毛によるやけどの対処・治療・予防法

・対処法
早めの適切な冷却で進行を抑えてください。自己判断はせずに、速やかに専門の医療機関を受診してください。
・治療法
やけどの深さに応じて適切な治療を受けてください。傷跡に残らないように「冷却」「清潔」「湿潤」の3点が大切です。
・予防法

日焼け後の脱毛を避ける事と、テスト照射を徹底することが大切です。また自分が利用する脱毛法のやけどのリスクについて知っておくことも大切です。

以上、脱毛でのやけどについて解説しました。
脱毛でのやけど、そこまで多くは起こりませんが、万が一発症した場合、応急処置が遅れると傷跡が残ってしまう可能性もあります。ですので、「やけどかもしれない」と感じたら、すぐに応急処置をし、少しでも不安に感じたらすぐに専門の医療機関を受診するようにしてください。また、やけどにならないような予防法を実践することも重要です。

さらに詳しく学ぶ|やけどの医学的解説

やけどの深さの分類

やけどの深さは4段階に分類されます。

Ⅰ度熱傷

軽度なやけどで、表皮のみの損傷です。肌の表面がヒリヒリして赤くなりますが、3~4日程度で赤みが引き、自然治癒します。日焼けもここに分類されます。(水ぶくれができるものを除く)

浅達性Ⅱ度熱傷

表皮から真皮の浅い部分までの損傷です。強い痛みがあり、赤く腫れて水ぶくれができます。しっかりとケアしないと跡が残る可能性があります。

深達性Ⅱ度熱傷

表皮から真皮の深い部分までの損傷です。痛みはなく、水ぶくれができて、その下の部分の肌が白くなってきます。跡が残りやすいです。

Ⅲ度熱傷

表皮、真皮、脂肪層、3層全ての損傷です。肌表面が茶色く、壊死すると白くなり感覚もなく、汗腺や毛包、神経終末(シナプス)などにも影響して機能障害を伴います。

やけどの深さによる症状の分類
分類 症状
Ⅰ度熱傷 赤くなって、数日で治る。痛みあり
Ⅱ度熱傷 浅達性 赤くなり水ぶくれができる。痛みあり
※水ぶくれを圧迫すると赤みが消える
深達性 赤くなる。または紫色~白くなる。水ぶくれができる。痛みなし
※水ぶくれを圧迫しても赤みが消えない
Ⅲ度熱傷 黒っぽい、褐色または白色。水ぶくれなし、痛みなし

やけどの範囲と重症度

やけどの重症度は、やけどの深さがどの程度の範囲に広がっているかによって診断されます。

軽傷

Ⅱ度15%未満の範囲、またはⅢ度2%未満(顔、手などの特殊部位以外)

中等度

Ⅱ度15~30%の範囲、またはⅢ度2~10%の範囲(顔、手などの特殊部位以外)

重症

Ⅱ度30%以上、またはⅢ度10%以上、または特殊部位(顔や手など)のやけど。気道熱傷、化学薬品、電気によるもの。

やけどと似た症状の光接触皮膚炎について

照射後、皮膚に赤みやヒリヒリとした痛み、発疹、かゆみなどの症状が出た場合、やけどではなく光へのアレルギー反応というケースがあります。症状が似ているため勘違いしやすいですが、光接触皮膚炎と言ってまったく別のものです。

光接触皮膚炎の多くは日光によって起こりますが、さまざまな環境の変化や化学物質の影響を受けるため、まだまだ病因が特定できていないというのが現状です。

どちらにせよ注意が必要ですので、このような症状が出た際には早めに医療機関を受診してください。

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